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どういう訳か、このところ広島県の中山間地の町村に、声をかけられることが多い。島根から見ると、広島は都会、そんな先進的イメージのある地域から「地域起こし」に関する話をして欲しいという依頼を頂くことに初めはとまどった。
しかし、広島の各地を回るにつれ、広島県と島根県、県は異なるけれど、共通するものを強く感じた。たとえば、緑の山々に映える赤茶色の甍(いらか)の波。両県にまたがる中国太郎江の川の流れと恵み。今も人々の心に生きる神楽舞。そして「みんさい、きんさい」と、言葉にもまた共通の味わいを感じた。
全国的にも知名度の高い広島と、過疎と少子高齢化の代表でもありその場所すら正確に答えられない人も少なくない島根だが、中山間地が抱える深刻な状況はあまり変わらない。むしろ島根の方が様々な点で恵まれているのではないかと思うことも多々あった。だからこそ、私のようなものにも、地域起こし活動の事例を聞きたいとお声がかかっているのだと思う。
一方、ある時に広島の市内で若い女性から「島根県から広島県に来られたのは初めてですか」と聞かれた。質問の意味がすぐには飲み込めずにどう答えていいか分らなかった。私の住む桜江町から、浜田道で広島までは1時間半程度。新幹線に飛行機、どこに行くにも広島は通過点であるし、仕事の取引先も多く、買い物に出かけることも多い。車で3時間以上かかる県庁所在地の松江市よりも広島市は、私たちには身近なところであり、生活圏といってもいいかもしれない。この女性の言葉に、島根から広島は近いけれど、広島からの心の距離はまだまだ遠いのだと気付かされた。
それにしても、行政区域や地方自治体という見えない境界線はなんなのだろうと、最近感じることが多い。
特に観光という側面からいえば、たとえば島根の観光地を訪れる人々は「アクアス」「MIZUHOハイランド」「日本海」「美又温泉」に行こうという人はあっても、「江津市」や「瑞穂町」「金城町」に行くという意識はあまりないだろう。
何よりわが国では、観光立国を目指して「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を展開しているが、まして外国の人々が日本を訪れる際に、ブランドとしての都市や観光地名は目指しても、県境や市町村という枠組への関心は薄いであろう。
しかし、これからの時代、地域の自立が必須であるならばこそ、むしろ同様の風土や文化を持つエリアが、統一したコンセプトを共有し、個々の特性を活かしながら連携していくことの重要性を感じている。
一方では、市町村合併が進んでいるが、既に私たち現場の感覚では、その合併を超えて、もっと揺るやかで広がりのある新たな共同体意識が芽生えつつあるように思う。
少なくとも、広島県の中山間地を訪れ、人々と直接触れるたびに、個々の地域が抱える課題のひとつひとつがわが身の事と感じられ、「県」という境すら越えて、新しい「圏」を共に創造していかなければと、そんな思いが熱くこみ上げてくる。
日時: 2007年02月07日 15:35
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