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こんにちは! かわべまゆみです。1999年に東京から島根県に夫のUターンにお付きIターンして参りました。
そこで待っていたのは、笑いが止まらないほどハッピーでエキサイティングな田舎暮らしの日々でした。

エッセイetc

◎中国新聞掲載「上海蟹より旨いツガニ」

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中国地方一の大河「江の川」は、旨いものの宝庫でもある。鮎はもちろんのこと、鰻にヤマメに手長海老、信じられないことに1メートル近いスズキまで遡上してくるという。そんな川の幸の中でも、特に美味しさを誇るのが「ツガニ」である。別名モクズガニとも言われるこの蟹は、食通に人気のあの「上海蟹」の親戚だという。島根県石見地方に引っ越してきてすぐに「江の川には上海蟹よりおいしいカニがいる」という噂を聞いた。食いしん坊でグルメを自認する私としては、ぜひその真偽を確かめたいと、カニ味噌がモミジ色になりおいしさが増すといわれる秋を待った。
ツガニは、日本各地の河川に生息しているが、江の川のものは格段においしいらしい。その訳は、川べりが自然のままに残された所が多く、しかも切り立った岩山に沿っているために、岩と岩の間から山水が湧き出しカニの腹も体も美しいのだと。また、大河ゆえにツガニが下る距離が長く、その間にいろいろなものを食べているからともいう。人間でも経験が豊富なほど、その味わいが増すというところだろうか。
さて、待ちに待ってようやく出会えたツガニは、もちろん生きたまま調理される。俊敏で、大きなハサミには毛がびっしりと生え、黒くてどっしりとして貫禄があった。しかし、見た目のゴツさからは想像もできないほど、塩茹でをしただけの身は、繊細で爽やかで実に奥深い味わいだった。特にメスの味噌は、芳醇かつ濃厚であり、甲羅に日本酒を注いで飲み干す時には「石見に来てよかった」と、思わず涙ぐむほどだった。上海蟹と比べて、どちらがおいしいと単純にはいえないが、食べた瞬間の感動の大きさでは、圧倒的に江の川のツガニに軍配が上がった。ただ残念なのは、一方の上海蟹は、それを目当てに外国まで行くグルメツアーが開催されるほどもてはやされているのに、この地にツガニを食べに来る人は少なく、鮎ほどの名物料理にもなってはいない。その謎を解こうというか、ただの食いしん坊から、改めて上海蟹で有名な料理店に出かけた。剥きにくい身は、剥きやすいように独特のカッティングがされており、調理法も老酒に漬け込んだり、煮たり蒸したり炒めたりと様々に五感で楽しませてくれた。石見での調理法といえば、塩茹でや味噌汁がほとんど。素材の旨さを味わうシンプルな調理法ではあるが、わくわくする様な楽しさには欠けるかもしれない。
「素材はおいしいが、料理は今ひとつ・・」ともいわれがちな石見の地。しかし、肝心の素材が天下一品ならば、石見風の調理法や美味しさの演出をすればまさに鬼に金棒。「ツガニづくしツアー」が開催され、全国から江の川のツガニを求めて、食通たちが訪れる日も近いかもしれない。
石見に秋の風が吹き始めた、おいしいツガニ達が中国太郎を下りだす。さて、今年は、釣り名人にこっそり教えてもらった「焼きツガニ」に挑戦してみようと思う。

※このエッセイは、本来「上海蟹より旨いツガニ」というものでしたが、掲載の都合上紙面では別のタイトルとなっています。

日時: 2007年02月06日 15:31

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